2013年9月22日日曜日

がんワクチンは効くのか?治験での失敗や、医師の中で有効性に疑問の声も

今回も記事紹介です。

日本では、「有効性が曖昧でも安全だからいいじゃないか」という議論があるようですが、医薬品は有効性と安全性の比較考量で価値が決まります。要は、風邪薬で髪の毛が抜けたら承認されませんけど、抗がん剤なら有効性もあるので副作用が許容されるのです。
そもそも体に異物を取り込むものですから、薬になるものなら何らかの害は有り得ます。極論ですが、水のようなものを安全だからと言って有効性を確認せずに薬として高額で売るのは詐欺です。
その評価に欠かせないのが科学的データですが、日本ではこれが軽視されている気がします。ノバルティス社のディオバンの件もそうですが、科学的データに対する意識が低い証拠です。科学的データがなければもはや医療とは呼べず、宗教と同じで単なる心の救いにしかなりません。
みなさんも心の救いだと割り切れるならいいですが、安くはないので科学的データの裏付けのない治療は避けましょう。


Cancer Vaccine Setback (WSJ, 09/05/13)

がんワクチンの挫

実験的がんワクチンは、臨床試験で皮膚がん患者を助けられず、腫瘍と戦うために体の免疫システを利用しようと試み話題になった医療分野での挫となった。

通常のワクチンと違い、この製品は、既にがんと診断され、その病と戦うために免疫システを利用したい患者に与えられる、immunotherapiesとして知られるいくつかのいわゆるがん治療ワクチンの一つである。

この製品は、進行性黒色腫の65%に含まれているが、通常の健康な細胞にはない、特定の種の腫瘍で見つかったタンパク質を体内に注入する。希望的観測では体がこの異常なたんぱく質を異物として認識し、がん細胞を含む、それが存在する体内のどこでもそれを攻撃するはずだった。

この失望的な結果にも関わらず、このことはimmunotherapyに関する熱狂、特に別の機序で作用し黒色や他のがんへ時々劇的な効果を与えるために興味を掻き立てるimmune checkpoint inhibitorsへのものをくじく可能性は低い。

別のがんワクチンは上市されている。それは、患者自身の細胞を血液から取り出し、体外で加工し、がんに対する免疫システムを活性化するために体内に再注入されるというまったく別の方法で作用する。投与がはるかに簡易な競合薬の存在や医師の中での製品の有効性への懐疑といった要素を反映し、売り上げはここまでいまいちだ。

分析者は長年、MAGE-A3ワクチンをリスキーなプロジェクトであると考えてきたが、専門家の中にはこの製品を見限るにはまだ早すぎると述べる者もいる。

2013年9月14日土曜日

米国医師、医学的に必要だからではなく、儲かるから帝王切開を選択。解決策は患者自身が勉強すること。

記事紹介です。
医師も稼ぎたいので、患者が勉強しないと無駄な治療をされるということでしょうか?
 
「金銭、医師がより多くの帝王切開を行う動機となっている可能性がある」
 
 経済的インセンティブと出産の医療上の意思決定の間の関連を調べた新たな研究によると、経済的インセンティブがある場合に、産科医はより多く帝王切開を行う。
1996年の5人に1人と比べ、現在生まれてくる赤ちゃんの約3人に1人は、帝王切開で生まれる。同時期に、米国の出産の年間医療コストは毎年30億ドル増加してきた。また、帝王切開率は州により大きく異なる。例えば、ルイジアナ州の帝王切開率はアラスカ州よりほぼ2倍も高い。
多くの医療現場にいる産科医は帝王切開のためにより高い支払いを受けている。National Bureau of Economic Researchにより発表された新たな中間報告の中で、ヘルスケアエコノミストであるErin Johnson氏とM. Marit Rehavi氏は、医師は通常分娩と比べ、帝王切開のために数百ドル多く稼ぎ、病院は数千ドルより多く稼ぐ可能性があると計算した。
また、研究者は、医師である患者は、帝王切開を受ける可能性が約10%低いことが分かった。
 Johnson氏とRehavi氏は、帝王切開が前から予定されていた場合には、医師である母と医師ではない母の間の帝王切開率が異ならないことが分かった。
Johnson氏とRehavi氏はまた、医師が定額で支払いを受ける場面での格差を分析した。この場合には、医師である母の多くが医師でない母より多くの帝王切開を受けていた。
Johnson氏は、格差に対する1つの解決策はより良い患者の知識と啓発にあることを示唆した。
 
Money May Be Motivating Doctors to Do More C-Sections (NPR, 08/30/13)

オバマ大統領の医療制度改革


現在米国が抱える諸問題への処方せんとして出てきたのが、20103月に成立した医療制度改革法(Patient Protection and Affordable Care Act)です。同法は、①カバレッジの拡大(無保険者の削減)、②医療の質の向上、③医療費の削減を主な目的としており、米国財政が悪化する中での医療費支出の伸びの抑制や、先進国の中では極めてまれな国民皆保険制度の欠如への対応策として期待され、まだ施行の途上であるがオバマ政権の内政の最大の実績とされています。

同法には、いくつかの柱がありますが、その主なものは民間保険会社に対する規制の強化や無保険者への医療保険カバレッジの拡大です。先に述べたように民間保険会社の介在を私は米国の医療費が高い大きな要因だと考えていますが、管理コストを抑制しつつ、国民への医療保険カバレッジを拡大するために、同法は、①既往症による保険加入拒否・保険料設定の禁止、②保険料格差を年齢(最大3倍)、地域・家族構成、喫煙要因のみに制限、③生涯給付上限設定の禁止、年間給付上限設定の禁止 、④納められた保険料総額の85%を医療支出に充てない場合の保険料返還などの規制を課しています。既往症のある患者の加入拒否禁止や年齢による保険料格差規制の強化の副作用として、比較的健康な若年者の保険料の高騰が予想されることや、今すぐ保険に加入しなくても病気になってからでも拒否されること無く保険に加入できるようになることにより、そうした層が医療保険に直ちには加入しないことも想定されたので、同法は予め、個人への医療保険購入の義務付け・非購入者への罰金賦課(いわゆるindividual mandate)規定を設けています。さらに、同法は、あわせて、メディケイドを拡大することにより、無保険者への医療保険カバレッジの拡大を目指しています。                                                

しかし、昨年計算を狂わせる事態が生じました。フロリダ州を始め共和党知事を擁する26州等が原告となり、同法が大部分の国民に医療保険への加入を義務付ける点や補助金を通じたメディケイドの拡充を州政府に強制することの合憲性を争う裁判が提起されていましたが、昨年6月最高裁により、州がメディケイド拡大の要請に従わない場合にはメディケイドに関する州へのすべての補助金の交付を停止するという手法は違憲であるとの判決が出されました。これにより、メディケイド拡大の成否は各州の判断に委ねられることになったため、現状では、共和党系知事の州を中心に想定どおりメディケイドが拡大されるか微妙な雲行きになっています。

この他にも、昨年11月の大統領選で医療改革法廃止を訴える共和党候補を破りオバマ大統領が再選を果たしたことで、医療制度改革法の施行は万全だと思われていましたが、ここに来て、施行準備のための予算不足exchangeと呼ばれる小規模企業や個人向けのオンライン上の医療保険取引市場の政府による準備の遅れが報道されるとともに、医療保険を提供しない大企業事業主への罰金賦課規定の施行が20151月まで延期されることが決まるなど施行に伴う諸々のトラブルが生じています。報道によると、20151月の前には中間選挙があり、再度医療制度改革法が争点の一つに挙がることが予想されており、早くも下院共和党からは、大企業事業主への罰金賦課規定の施行を延期するならindividual mandateも延期するのが公平だという主張が出るなど、全面的な施行までにはなお曲折が見込まれます。

2013年9月13日金曜日

アメリカの医療費が高い理由。それは、医療を産業化していること。しかも、患者アクセスは犠牲に。


よく、OECDの各国医療費の対GDP比を用い、日本は10%弱で、アメリカは20%弱、西欧先進国はその間で日本の医療は比較的効率的だという話を聞くが、高齢化、医療の高度化、出来高払い方式による過剰医療行為やそれらに伴う医療過誤訴訟、過度な肥満など健康管理への意識の低さと雇用主不介入などの要因に加え、政府が介入せず、民間保険会社を介在させ、各々のプレイヤー同士で医療給付について交渉させていることが米国における医療費高騰の大きな要因ではないかというのが私の直感である。医療機関で患者が持っている保険が使えるか否かが保険によって違うので、受付時に持っている保険を医療機関が確認しなければならないことや、医療費についての保険会社との調整など、医療機関側の管理コストは膨大だし、民間保険会社もフォミュラリーを各々作らなければならないなど、日本の制度と比べた場合、この類のコストがそのまま医療費に上乗せされている。

文字通り医療を産業化している米国では、この手のコストをかけることによって、多くの雇用を生んでいることや良い保険を持っている一部の金持ちが最先端の医療を受けられることも事実であるが、一方でこうした管理コストやそのための人件費が医療費に上乗せされることで、医療費の高騰を招き、医療費が負担できない一般国民の医療アクセスを著しく阻害していることもまた事実である。みなさんも米国では盲腸手術が数百万といった類の話を聞いたことがあるかもしれない。また、保険会社も医療機関も自由市場の中で交渉力を増すために、一定の規模を求めてM&Aを繰り返しており、そのことが更なる医療費高騰に繋がっているとの指摘もある。

もちろん、米国でも救急医療の場合は、医師には保険の有無に関わらず患者を診る義務があるが、一部の患者は病状がぎりぎりまで悪化し救急で運び込まれるまで待っている。これは、患者のためにもならないし、医療費も却って高くついている可能性がある。

米国では、選挙戦中に政治家が、「医療保険が無くて医療を受けられない人がいるとしてもそれはその人の選択、責任だ。救急の場合には医療が受けられるから無保険者がいても問題ない。」などと堂々と発言していたり、オバマ大統領の医療制度改革について世論調査を行っても賛否が真二つに割れたりと日本人の私からすれば驚くべきことが多いが、多民族国家で国民に連帯感が無い裏返しかもしれないが社会全体に自己責任原則が徹底していることには驚かされる。

私の医療保険


私の場合、実際に初めて米国のクリニックにかかった際に受付であなたはどんな保険を持っていますかと尋ねられたときには、(複数の保険に加入しているという事情もあったが)その医療機関及び医師がネットワーク内か否か、処方薬のカバーの有無、deductibleがいくらかなどうまく説明できず戸惑った記憶がある。念のため申し添えると、日系クリニックだったので、決して英語の問題ではない。

日本では、受診後すぐに医療機関の窓口で患者が治療費の一部を支払って帰るのが当たり前だが、アメリカでは、私の場合は、クリニックで受診後、まずはクリニックが保険会社に請求書を送り、保険会社が請求額を地域の相場に照らし確認し、クリニックと値引き交渉した後、受診から3ヶ月くらい経ってやっとクリニックから送られてきた請求書に基づき医療費を支払っている。

2013年9月12日木曜日

アメリカで標準的な医療保険って?


私自身も最初そうだったが、「アメリカで標準的な医療保険とはどんなものなのか」と聞かれることがよくある。日本人的な感覚で言うと、保険料率や国費投入割合などが法令で規定されており、全国一律の診療報酬により、誰であっても、全国どこの医療機関に行こうが同じような給付を同じ価格で受けられるので、こういう質問は全体像を掴むために当然と思われるかもしれない。しかし、ここは自由市場の国アメリカ、答えは「標準など存在しない」である。

一言に民間保険と言っても、大企業のエリート社員が持っている手厚い給付のものから、deductible (毎年保険が効き始める前に自己負担しなければならない一定の控除免責金額)が高額に設定されているもの、利用できる医療の範囲が狭い、給付率が低いなど給付内容の薄いもの、利用できる医療機関に制限が多いものなど、保険料負担などに応じて保障される医療アクセスも千差万別なのである。また、年間給付に上限額が設定されているものもある。日本と違い、自己負担の上限額ではなく。
 
また、分権国家のアメリカでは公的医療保障であるメディケイドの運営も例に漏れず基本的に州単位とされており、貧困家庭の6歳以下の子供はカバーするなど連邦が定める最低限の要件はあるものの、どんな人がメディケイド[1]の対象となるかはその人が住む州によって違うという状況である。例えば、ある州では連邦の定めた貧困基準を満たしていても子供のいない大人は対象とならないといったことが現実に起きている。

 




[1]  ここでは、メディケイド以外の州ごとの貧困者向け医療プログラムもあわせて考慮している。

2013年9月10日火曜日

アメリカの医療保険制度って?

 最初に、アメリカの医療保険制度がどうなっているのか押さえておきたいと思います。
 
米国の医療保障の最大の特徴は、まず何と言っても民間保険が主流であり、一部の州を除き加入義務がないことです。当然ですが、民間保険を持てない人もいるので、米国にも日本のような公的医療保障制度が存在しますが、それは高齢者及び障害者を対象とするメディケア、低所得者を対象とするメディケイドなどに限られており、日本と違い国民の一部しかカバーしていません。当然の帰結として医療アクセスが制限される多くの無保険者が存在し、大きな社会問題となっています。

この状況を、具体的に、数字を挙げて見てみましょう。2011年時点で、アメリカの人口は31,160万人ですが、このうち、民間保険に加入しているのは64%19,730万人であり、さらにそのうち事業主提供型保険が17,010万人で、直接購入型保険が2,720万人となっています。一方で、メディケアは4,690万人(15.2%)、メディケイドは5,080万人(16.5%)をカバーしており、これらの中には、Dual Eligibleと呼ばれるメディケア及びメディケイド双方の対象となる者が約900万人含まれていると言われています。これ以外にもCHIPと呼ばれる児童向け医療保険プログラムなどがあり、民間保険を持たず、公的医療保障の対象にもならないいわゆる無保険者は4,860万人(15.7%)となっています。

このように、米国は先進国の中では珍しく国民皆保険制度を採用していない国となっており、国民の医療アクセスは折に触れ社会問題になっています。